稗方 和夫 HIEKATA Kazuo

大学院新領域創成科学研究科 人間環境学専攻 教授

連携提案

本研究室では複雑な産業や社会のシステムを対象とした設計方法論の研究とその産業・社会への実装を目指し、以下3項目に取り組んでいる。

(1) システムの目的・機能・振る舞い・利害関係やサブシステム間の関係性を記述する方法論の構築

(2) 社会や産業における大規模かつ複雑なシステムの挙動をシミュレートするモデルの開発

(3) 複雑なシステムの問題を解決するための異分野の専門家間の深いコミュニケーションとコラボレーションを支援するチームワーク環境の構築

研究成果の実装や共同開発に関心のある企業との連携を希望している。

キーワード  

システムデザイン, 情報システム, 海上輸送のカーボンニュートラル, シミュレーション

希望する連携

共同研究 / 学術指導

プロポーザル

1.ドメイン知識に基づくドキュメントのセマンティックオーサリングに関する研究(HKK24051)

カテゴリー

SDGs:17の持続可能な開発目標 

研究内容

この研究室では文書や画像などの多様なドキュメントを対象に、組織が有する知識(ドメイン知識)を機械可読な形で記述することで、計算機による情報抽出を支援するシステムの開発を行っている。適用事例としては、デジタルアーカイブで公開されている歴史史料と歴史研究者が有する知識の関連付けによる研究プロセスの改善や、情報システム企業が有する設計文書と設計知識の関連付けによる業務の効率化がある。

セマンティックオーサリングに向けた知識体系 © 稗方和夫

連携への希望

この研究室では、管理対象とするドキュメント、組織の有識者へのヒアリングや協力を得ることが可能で、ドメイン知識に基づくドキュメント管理(セマンティックオーサリング)に関心を持つ企業のコンタクトを待つ。

2.レーザスキャナによる計測データ処理プラットフォームの開発と応用(HKK24052

SDGs:17の持続可能な開発目標 

研究内容

製造業における部品の工作精度の評価には、形状計測が可能な非接触3次元計測機であるレーザスキャナの利用が考えられる。レーザスキャナは近年目覚しく性能が向上しており、短時間で測定対象物を高密度に計測することが可能となった。高密度の計測データ(点群データ)からは連続曲面を緻密に再現することも可能である。

一方で、点群データの汎用のビューワ、エディタは充実しつつあるが、個別の工程に特化してエンジニアリングの観点から有用な情報を効率的に取り出すことは依然困難である。

船舶曲がり外板の解析例

曲面部材の設計データと計測データの比較

© 稗方和夫

点群処理プラットフォーム

個別用途に用いる処理系を実装するための基盤システム

© 稗方和夫

連携への希望

本提案では、独自に開発したカスタマイズ可能な点群処理プラットフォームを用いて、特定用途へのレーザスキャナ導入のための情報システムの開発に関心を有する企業・団体等からのコンタクトを希望する。

3.デジタルトランスフォーメーションデザイン(HKK24053

SDGs:17の持続可能な開発目標 

研究内容

企業や組織のオペレーションは複雑であり、新しい技術の導入効果には不確実性を伴う。情報技術の導入ではPOC(Proof Of Concept)による解決が期待されるが十分ではない。例えば、輸送システムにおいて新しいセンサー導入等による個別の輸送機器の故障率改善が、影響伝播や創発的効果を通じてシステム全体にどのような効果を及ぼすかを見積もることは困難である。本研究室では、新技術導入、組織変更、製品開発プロセス革新などによるトランスフォーメーションの影響評価に企業パートナーとともに取り組んでいる。

ソフトウエアの導入プロジェクトのモデル。

ソフトウエアの導入プロジェクトメンバー間の、組織変更などによるコミュニケーション水準の変更によるプロジェクト遅延防止への効果を予測した例。

4.シミュレーションを用いた不確実性下の経営意思決定支援(HKK24054

研究内容

シミュレーションを用いて不確実性下の意思決定を支援する方法について研究を行う。複数の事例について図に示す。

海運は原油価格、為替レート、船舶価格、運賃などの不確実性下での意思決定が必要となる。これらの不確実性を複数の起こりうるシナリオとしてモデル化し、船舶の売買タイミングと船隊としての収益をばらつきを含めて検討することで意思決定の支援を行う。グラフは15年間の船隊の収益の推移のシミュレーションの例。

業務への新しい技術の導入を検討する際、それらの技術間の創発的な効果も想定する必要がある。本研究は技術の組み合わせにおける導入効果をより深く探索および評価するための意思決定支援手法を提案した。提案した手法を海上物流システムに適用し、複数の技術導入時の利益向上を評価している。図はコンテナ船における2つの技術の導入における創発効果を検討した例。