大矢 禎一 OHYA Yoshikazu
大学院新領域創成科学研究科 先端生命科学専攻 教授
連携提案
分子細胞生物学、特に真核単細胞生物である出芽酵母を対象とした分子生物学・分子遺伝学を主な研究領域とし、細胞の形態形成、細胞増殖、細胞内情報伝達に関する研究を行なっている。食品・医薬品・農薬等の品質管理や製品開発、技術課題解決などへの応用について、企業からの積極的な提案を期待する。
キーワード
分子遺伝学, 発酵工学, 出芽酵母, 画像解析, 抗真菌剤
希望する連携
共同研究 / 学術指導
プロポーザル
1.酵母及び微細藻類の品質管理(OYS24051)
SDGs:17の持続可能な開発目標
研究内容
醸造製品及び発酵食品を作る際の酵母の品質管理は、最終商品の品質を維持する上で極めて重要な役割を果たしている。またアスタキサンチンなどの機能性物質を製造過程においても、ヘマトコッカスなどの微細藻類の品質管理が重要である。長年勘に頼ることの多かったこれら微生物の品質管理を、データサイエンス的手法を用いて形態的に評価する技術、およびそのためのソフトウェア(CalMorphとHaematoCalMorph)を開発した。酵母や微細藻類の増殖過程が変化する際に細胞の形状が変化することに着目し、多数の微生物細胞を含むサンプルの顕微鏡画像をPCに取り込み、そのビッグデータを画像解析することにより合理的な品質管理を可能にした。
出芽酵母の蛍光顕微鏡像
© 大矢 禎一
連携への希望
工場規模での実績もあり、この技術の活用に興味を持つ企業への技術提供およびコンサルティングが可能である。
2.酵母の機能性食品への利用研究(OYS24052)
SDGs:17の持続可能な開発目標
研究内容
近年、世界中の国々で健康志向の観点から発酵食品への関心が高まってきている。中でも出芽酵母は、発酵醸造、発酵食品、機能性食品の分野で従来までも多く利用されてきているが、出芽酵母は優れた育種微生物でもあるため今後の伸びシロもまた大きい。我々の研究室では、出芽酵母の育種・開発等について多くのノウハウを蓄積してきた。その研究成果に基づき、出芽酵母の醸造産業、食品産業、健康食品産業のニーズに応える応用研究を行いたい。
出芽酵母の蛍光顕微鏡像
© 大矢 禎一
想定される応用
特に機能性食品への応用については、β1,3-グルカンやその他機能性物質生産、付加価値をつけた出芽酵母を含む醸造・健康食品、乳酸菌と出芽酵母の相乗効果を狙った健康食品などの研究開発が考えられる。
連携への希望
企業からの積極的提案を期待する。また、これらに関連する課題に対してのコンサルティングによる協力も可能である。
3.抗真菌剤のスクリーニング研究(OYS24053)
SDGs:17の持続可能な開発目標
研究内容
当研究室では細胞壁合成酵素阻害剤が抗真菌剤となるというコンセプトのもと、長年多くの合成化合物及び天然化合物のスクリーニングを行ってきた。このスクリーニング系を用いることによって引き続き新規な抗真菌剤(農薬・医薬品)のスクリーニングが可能であるので、企業からの申し出があれば新たな抗真菌剤のスクリーニング研究を行いたい。
出芽酵母の蛍光顕微鏡像
© 大矢 禎一
4.化合物の細胞内標的の予想と同定(OYS24054)
SDGs:17の持続可能な開発目標
研究内容
医薬品及び農薬の開発の際には、その化合物が細胞内のどのような標的分子に作用するかを知る必要がある。たとえ化合物が機能性物質であることがわかっても、作用機序がわからないままでは薬としての信頼性が得られないためである。我々の研究室では、形態プロファイリング法という細胞の形態情報の類似性を基にして化合物が細胞内で相互作用する標的分子を推定する新しい方法を開発した。その鍵になるのが形態情報を高次元フェノタイピングする画像解析ソフトCalMorphと類似性を抽出するアルゴリズムである。
形態プロファイリングによる細胞内標的の同定
© 大矢 禎一
想定される応用
このケミカルゲノミクス的手法を使うことにより、既に出芽酵母における幾つかの新しい化合物の細胞内標的を同定することに成功してきている。
連携への希望
企業からの提案があれば、ぜひとも新しい化合物の標的予想を行ってみたい。
5.より良い日本酒を作るための、ゲノム編集した日本酒酵母(OYS24055)
研究内容
清酒酵母の育種では予期せぬゲノム変異(オフターゲット変異)が起きやすく、それが日本酒の品質や製造効率を大きく左右している。このような課題の解決に向け、本研究室では清酒酵母のCRISPR-Casシステムを用いたゲノム編集を行い、安定した品質と高い製造効率を得られる酵母の開発に成功した。
本技術では、酵母のゲノム編集において高効率で狙った部分だけ変異を加えることが可能であり、オフターゲット変異を極めて低頻度に抑制できる。例えば、清酒酵母のAWA1遺伝子の機能欠失により、もろみ中に泡の層の形成を防ぎ、高い醸造効率が得られる。また他の3種の遺伝子の変異/機能欠失によって香りの構成物質や有害物質の発生量のコントロールを実現している(図1~3)。
なお、本技術の詳細については、関連情報の技術紹介資料をご覧いただきたい。
図1 発癌性物質のもととなる尿素の生成抑制
横軸:左のAWA1欠失株を出発株とし、CRA1欠失、MDE1欠失、FAS2点変異を追加した株を連続育種した。
縦軸:尿素の発生量。。
© 大矢禎一研究室
図2 時間経過に伴う劣化香「老香」の低減
横軸:図1と同様。
縦軸:老香の原因物質の発生量。
© 大矢禎一研究室
図3 吟醸香の構成物質の産生増加
横軸:図1と同様。
縦軸:吟醸香の構成物質の発生量。
© 大矢禎一研究室
想定される応用
本ゲノム編集技術は、日本酒の他、ワイン・ビールなどの酒類醸造、パン酵母への利用も可能である。
連携への希望
現在特許出願中であり、この技術の実装や応用などに関心のある企業からのコンタクトを希望する。
関連情報
技術紹介資料 data/draft/researcher/00/00173/proposal/0/upload/日本酒酵母 ご紹介技術資料.pdf