尾田 正二 ODA Shoji
大学院新領域創成科学研究科 先端生命科学専攻 准教授
連携提案
本研究室では、低線量・低線量率の放射線被ばくがメダカ個体に与える影響を組織学的解析・遊泳行動解析およびトランスクリプトーム解析によって包括的に解析を進めている。さらに、保管中に生じる過酸化脂質を除去した肉類・魚介類の摂取により動物のカラダの酸化・還元のバランスを改善し、動物個体の健康状態を改善する研究を進めている。これらの研究は低線量・低線量率の放射線被ばくによる慢性的酸化ストレス負荷に拮抗する術となるだけでなく、老化や発がん機構の制御にもつながるものである。食品および食による健康促進に関心のある企業との連携を希望する。
また、保守的なゲノム維持と革新的なゲノム変異とがいかにバランスを保ちながら突然変異を介して生物の多様性を実現してきたのかについて、約35年前に日本全国から集められたメダカ自然集団74系統を維持し、種分化と環境適応メカニズムの研究と環境保全教育を進めている。稀有なリソースである自然メダカ系統の活用に関心のある企業との連携を希望する。
東京大学柏キャンパスにおいてメダカ自然集団を系統維持している屋外メダカ飼育場(1)© Shoji ODA
東京大学柏キャンパスにおいてメダカ自然集団を系統維持している屋外メダカ飼育場(2) © Shoji ODA
キーワード
放射線生物学・動物生理学, メダカ, 酸化ストレス, 超音波, 複雑系
希望する連携
共同研究 / 寄付 / 学術指導 / 講演・アドバイザー
プロポーザル
1.噴流超音波式洗浄機による食材の洗浄と超音波の生体影響の研究(OSJ24051)
研究内容
噴流と超音波により、細胞組織を破壊することなく生体試料である食材を超音波処理する装置の開発を進めている。本装置で28-40 kHzの超音波処理を数分間から10分間実施することにより、レタス、キャベツ、白菜、水菜、小松菜、ホウレンソウなどの葉物野菜を傷めることなく洗浄し、表面に付着する土埃、泥汚れ、農薬類、添加物を除去することが可能である。ブドウ、イチゴ、リンゴ、レモン等の果物、モヤシ、トマト等をその品質を落とすことなく超音波洗浄することが可能である。また、豚肉、鶏肉等の肉類を超音波処理し、組織を破壊することなく表層の過酸化脂質を選択的に除去して臭みを除去して食味を改善することが可能である。魚体丸ごと、アジの開き、塩サバの切り身、サンマの開き、冷凍魚の切り身、冷凍ホタテ身等を処理し、古くなった魚に特有の臭みや冷凍焼け臭を除去して食味を改善することが可能である。アサリ、シジミ等を超音波洗浄して殻表面の泥汚れと臭みを除去することが可能である。さらに、超音波処理した野菜のシャキシャキした食感が復活し、鮮度が回復することを見出しており、超音波処理が細胞に与える生体影響の解明を進めている。
図1 噴流超音波式食品洗浄機(左)とその原理図(右)円筒形の洗浄槽底部中心より清浄な洗浄水(水道水)を噴流として常時供給し、超音波処理により剥離した汚れ等をオーバーフローで洗い流す。
© 尾田正二
図2 超音波処理が小松菜に与える影響水に浸漬しただけの小松菜(左)に比較して、超音波処理(10 min)した小松菜(右)では萎れていた葉が拡がり、食するとシャキシャキした食感が復活する。
© 尾田正二
図3 鶏ムネ肉の超音波処理鶏ムネ肉を超音波処理(3 min)すると洗浄水が白濁する(上)。鶏ムネ肉より脂肪分がミセルとなって洗浄水中に移行したものと思われる。噴流とオーバーフローにより白濁した洗浄水は除去される(下)。
© 尾田正二
図4 超音波したイチゴ(上)と処理中の白米(下)
© 尾田正二
2.メダカを用いた環境・健康の簡易・高感度アッセイ系の確立(OSJ24052)
研究内容
実験生物学のモデルとしての学術的基盤の整備が進んでいるメダカを用いて環境ストレス応答の研究を行っている。メダカの心拍と瞳孔サイズの変動、活動の概日リズムを指標とする自律神経活動に着目した解析、メダカの全身を連続組織切片とする細胞レベルの全身病理学的解析、メダカの遊泳運動とヒレの動きの数値解析、群れ行動の数値化分析による行動心理学的解析によって、放射線、水温、化学物質、食物などの環境因子がメダカの心身の健康状態に及ぼす影響を評価・解明することを進めている。
図1 メダカ心拍の研究無麻酔下のメダカ成魚の心拍を記録するための倒立実体顕微鏡-高速度ビデオカメラシステム(左)と取得されるメダカ成魚の腹側の映像(右、点線内が心臓)。
© Shoji ODA
連携への希望
水環境、放射線環境、生活環境、食環境、あるいはフィジカル・メンタルなどの様々なストレスを評価する簡易・高感度なアッセイ系として製薬・食品・環境分野などに活用していきたい。