米谷 玲皇 KOMETANI Reo

大学院新領域創成科学研究科 人間環境学専攻 准教授

連携提案

人の生活や社会,産業を支える新しいセンシング技術の創出を狙い、NEMS(Nanoelectromechanical systems)素子等のナノ構造やナノメカニカル構造体を利用したセンシングデバイス・システムに関する研究を行っている。

ナノメカニカル構造体は、ガス分子や光、熱、電磁気的作用など様々な微小量物質、微小物理量(センシング対象)に対し敏感にその共振特性を変化させるため、その変化量を検出,計測することにより、多様なセンシングデバイス・システムへの応用が期待される。

現在、荷電粒子ビーム技術(集束イオンビーム技術,電子ビーム技術)をベースにその実現のキーとなるナノ構造体やナノメカニカル構造体の作製技術に関する研究を行っている。また、ナノ構造体やナノ材料の物性や機能性,ナノメカニカル構造体の共振制御に関する研究を行い、センシングデバイスへの機能化を進めている。特に、ナノメカニカル構造体の“高感度性”とフォトニック構造の”光制御性”を複合的に活用し、光基礎物性のセンシングに関する研究を行い、生体ガスを利用した医療診断技術や環境化学物質の分析技術, 光波長安定化技術等の光通信技術の高度化に向けた研究を推進している。

これらの研究の応用・実用化に関心のある企業との連携が可能である。

キーワード  

ナノ・マイクロ加工,ナノメカニクス,センシングデバイス・システム

希望する連携

共同研究 / 学術指導

プロポーザル

1.NEMS/MEMSの動特性評価のためのオペランドプロファイリング技術(KMR24051)

SDGs:17の持続可能な開発目標 

研究内容

微細加工技術の発達により、メカニカル構造体の微細化が進み、従来の光学式の手法では、その動特性を精度良く評価することが困難になってきている。当研究室では、ナノスケールのメカニカル構造体の高精度な動特性評価達成に向け、新たな振動計測技術の研究開発を進めている。具体的には、数nmの空間分解能での計測を可能とする電子ビームを利用した振動計測法(図1),原子スケールの空間分解能を持つ原子間力顕微鏡を活用した振動計測法(図2)に関する研究を行っている。

【図1 電子ビームを利用した振動計測】振動子近傍に電子ビームを照射し、振動子の振動に同調して発生する二次電子の強度を周波数解析することで振動計測を行う。また、振動モードの時間分解観察も可能であり、高速な機械的振動を可視化できる。図は、カーボン片持ち梁の振動計測例である。© 米谷 玲皇

【図2 原子間力顕微鏡を利用した振動計測】AFMプローブにより振動子の励振,振動計測を行う技術である。原理的には、計測可能な周波数に上限は無い(加振電源等により制約)。また、顕微鏡としての特性を活かし、振動モードのマッピングも行うことができる。図は、グラフェン振動子の周波数応答計測を行った例である。© 米谷 玲皇

連携への希望

当研究室では、これら振動計測技術, 装置の高精度化や多機能化,或いはこれらを利用したナノ構造,ナノ材料の動特性評価に対し、共同研究を行う用意がある。

2.立体ナノ構造ボトムアップ加工技術とその応用(KMR24052)

SDGs:17の持続可能な開発目標 

研究内容

ナノメカニカル構造やフォトニック構造,バイオツールなどの作製を狙い、集束イオンビーム化学気相成長法(FIB-CVD)を活用した立体ナノ構造形成技術の研究開発を進めている。図1に示すようにsub100nm~数10μmの立体構造体をボトムアップ形成可能な技術である。原料ガス選択によりカーボン系,金属系など多様な材料で構造体の形成を行うことができる。これまでのところ、本技術のコアとなる描画技術やデバイス応用の基礎となる材料物性に関する研究を進めるとともに、微小部品操作のためのマニピュレータ作製や振動子センサ開発,単一細胞内小器官の操作計測のためのバイオツール作製などへの応用を行ってきた(図2)。

【図1 FIB-CVD原理模式図】

ガス銃から供給された原料分子を、集束イオンビーム(FIB)により励起される二次電子で分解,堆積させ、構造体を形成する。描画装置などを用いてFIBの照射位置,照射時間を精密に制御することにより立体構造体をボトムアップ形成する。

© 米谷 玲皇 

【図2 様々な構造形成,素子作製への応用】

FIB-CVD技術の(1)任意構造体形成,(2)材料選択性,(3)局所加工という技術的特徴から、さまざまな機能を持った構造体,素子の作製が可能である。

© 米谷 玲皇

想定される応用

本技術は、“アイデアを容易に形にできる”加工技術であり、研究開発における素子試作や研究を円滑に進めるためのツールの作製に適している。


連携への希望

当研究室では、ナノ・マイクロスケールの構造体作製,素子試作やツール作製についてのご提案に対し、共同研究を行う用意がある。

3.ナノメカニカル構造機能化とそのセンサ応用(KMR24053)

SDGs:17の持続可能な開発目標 

研究内容

ナノメカニカル振動子は、振動を介し様々な微小物理量(変位,機械的・電磁気的力,温度,電荷,スピン等)を検出できることから、NEMS(Nanoelectromechanical systems)センサのキーコンポーネントとして期待されている素子である。当研究室では、ナノメカニカル構造のセンサへの応用を進めるとともに、その研究開発の鍵となるナノ構造作製技術,振動計測技術,ナノメカニカル構造体の特性解明,機能化に関する研究を行っている。

ナノメカニカル振動子の高性能化,センサ応用を行った例を紹介する。図1は、歪印可によりグラフェン振動子を高Q値化した例である。振動子に引張応力を印可することで、共振周波数の高周波数化に加え、センサ感度に関係するQ値を大幅に改善(現時点で24倍の高Q値化を達成)することができる。その他、形状や表面状態,材質を工夫することで、振動子の高性能化,高感度化に取り組んでいる。また、センサ応用の一例として、図2に波長計測素子を示す。光通信技術,分光技術などの材料評価技術への応用を狙った素子である。このように、ナノメカニカル構造を活用したセンサ素子,或いはその高性能化に関する研究を進めている。

【図1 歪印可グラフェン振動子】

グラフェン振動子内部の歪(引張応力)を制御することによって、振動子を劇的に高Q化できることを見出した。本手法は、シリコン振動子をはじめとする様々な振動子の高性能化に有効な手法である。センサ開発における応答特性や感度向上の手段として期待できる。

© 米谷 玲皇

【図2 光波長計測ナノメカニカル振動子】

Au/DLC/Si薄膜振動子にプラズモニック構造を組み合わせることで、振動子に波長選択性を付与し、波長計測を行った例である。

24pmの波長分解能を達成している。振動子は様々な物理量,作用に対しその共振特性を敏感に変化させることから、多様なセンシングへの応用が可能である。

© 米谷 玲皇

連携への希望

当研究室では、ナノメカニカル構造,NEMSの製作や特性評価、及びその高性能化について共同研究を行う用意がある。「このような対象をセンシングできないか?」や「このような素子を高性能化できないか?」などのご相談にも対応可能であり、そのような中から意義のある連携,共同研究が生まれることを期待している。